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「理論編第2部 ボイストレーニングを自宅で始めよう」のP.32下段~P.34のレビューです。
日本人ボイストレーナーの福島氏担当部分です。


変更履歴
2009/08/16:第7回へのリンク設置

拍手[3回]


1.「声を体に共鳴させる練習」

------------- P.33より引用   start ---------------
声の音はとりわけ、のどから口、鼻の間(口腔、咽喉といった声道)、胸、顔面、頭部に
共鳴していきます。もっとも大きいのは胸の共鳴ですので、それを充分に生かしましょう。
胸に十分ひびかせることを意識して、ゆっくりと大きな声を出してみてください。
------------- P.33より引用   end   ---------------


もっとも共鳴する部位が胸ですか?英語ネイティブでは、胸よりずっと、咽頭・口腔・鼻腔で響いていますよね。
日本人では、胸よりずっと、咽頭・口腔で響いていますよね。ちょっと納得できない感じがします。


2.「胸でひびきを感じる(胸部共鳴)練習」

------------- P.33より引用   start ---------------
声をひびかせるというと、一般には頭のほうにひびかせるものとされます。
しかし、もっと低いところで、のどを開いて、深い声をだすことを身につけ
ていくと声は大きく変わってきます。体の深いところから呼吸の流れにのせて
出した声は、とてもよく伝わるからです。

------------- P.33より引用   end   ---------------

なるほど。福島氏が胸の共鳴を強調されていた意図がやっと分かりました。
そういうことですか。

日本人の場合は、首の気道が所々、狭くなっており、空気が通りにくい状態になっています。
この時、声帯・喉仏の位置は上がっています。

一方、首の気道の狭くなっているところを広くし、空気が流れやすくすることを「喉を開く」と呼ばれます。
この時、声帯・喉仏の位置は上がっていません。
「喉を開く」は、比喩でもイメージでもなく、レントゲンやMRI等で実際に観測可能です。
「喉を開く」と咽頭・口腔・鼻腔で声が響くようになります。


福島氏が言っているのは、教える立場での方便です。
「喉を開く」上で、喉を意識するより、もっと下の胸や腹を意識した方が深い「喉の開き」が得られます。
福島氏は、胸を意識することで深い「喉の開き」を得て、それによって、咽頭・口腔・鼻腔をひびかせるという教え方なのでしょう。この部分は、教授法としてはOKだと思います。


3.「口内での共鳴ポイントを知る練習」

------------- P.34より引用   start ---------------
今度は、あくびしたように出してみましょう(あくびした状態で声を出しにくい場合は、あくびの直前の形で)。
このときは、のどの奥が広く開いています。
横隔膜(腹部と腹部の間にある筋肉性の膜)も下腹部の位置へ下がりやすくなります。

------------- P.34より引用   end   ---------------

これには異論があります。
これは「あくび溜息法」と呼ばれる、典型的な声楽の手法です。

声楽は元々、欧米人が対象の方法論だと、私は主張しています。声楽の学問体系は、欧米で作られたからです。
そして、欧米人は、普段から「喉を開いて」声を出す人達です。
あくび溜息法は、「喉を開く」ための方法じゃないんです! 
「喉を開く」が実戦可能な人に対して、「喉を開き」を更に深くする方法なんです。
従って、あくび溜息法は、欧米人には有効ですが、日本人には無効なんです。

-------------
実際に検証してみましょう。

「喉が開いて」いれば、
A.口内の奥で舌が盛り上がっていない。
B.喉仏の位置が下がっている。
C.喉、首に力が入っていない。
これらの現象が起きます。
首、気道がリラックスしている状態が「喉が開いている」状態なのですから。


(1)「喉を開く」ことができない人があくび溜息法を実践する

「喉を開く」を実践できない普通の日本人が、あくび溜息法で果たして、「喉を開く」ことができるかを実験してみましょう。

普段の日本語の声で、あくび溜息法を試してください。あくびするときのように、下顎を大きく下げて、「アー」と声を出してください。そして、その時、上記A~Cを確認して下さい。

どうでしたか? 私も実験しました。
  • Aについては、口内の奥が滅茶苦茶、盛り上がっていて、舌が緊張していますよね?
  • Bについては、確かに喉仏が下がりました。でも、下顎を大きく下げるために、強制的に喉仏が下に下げられた感じですね。
  • Cについては、首に滅茶苦茶、力がかかっていませんか?

これは、「喉が開いた」状態ではなく、逆に、力んだ状態であり、強固に「喉が閉じた」状態ですよ。


(2)「喉を開く」ことができる人があくび溜息法を実践する

今度は、「喉を開く」を実践できる人が、あくび溜息法を行うと、どうなるか実験してみましょう。
英語鼻を習得されている方は、是非、試してください。

英語鼻を実践しつつ、(1)と同様、あくびするときのように、下顎を大きく下げて、「アー」と声を出してください。

どうでしたか? 私の場合、
  • Aについては、①の時と違い、舌が盛り上がっていない。
  • Bについては、喉仏が下がりました。
  • Cについては、下顎をかなり下げたので、首に若干、力がかかっている感じはしましたが、(1)と比べると、首に力がかかっている内に入りませんね。

普通に英語鼻で声を出すときより、喉仏が下がりました。この状態は、英語鼻で低い声を出している時と同じなんです。
低い声を出す= 「喉の開き」が深くなる、ということですから、

英語鼻+あくび溜息法 = 「喉の開き」が深くなった英語鼻
と言えるでしょう。


上記(1)と(2)の結果から言えることは、

  • あくび溜息法は、「喉を開く」ができない人には悪影響を与える。(逆に強固に「喉を閉じて」しまう。)
  • 既に「喉を開く」ができる人には、より深い「喉を開く」を体験させることが可能。

上で私が言っている通りでしたよね?
当然のことなんですよ。英語鼻を実践されている方なら分かることですが、
「喉を開く」ができない段階で、息を出す、息を吐くという意識が少しでも生じれば、強固に「喉が閉じた」状態になるんです。

あくび溜息法は、「喉を開く」方法じゃないんですから!

あくび溜息法の記述をするのなら、その前に「喉を開く」秘訣を書かないとダメ!
福島氏は、「胸でひびきを感じる(胸部共鳴)練習を先に書いてるじゃないか。」と反論されるかもしれませんが、
あれは「喉を開く」方法としては不十分ですよ。

もし、読者に、「胸でひびきを感じる(胸部共鳴)練習」で「喉を開く」を身につけさせるのであれば、
かなり時間がかかることを書く必要がありますし、あくび溜息法を実践する前に、本当に「喉を開く」が身についたかどうかをチェックさせる必要があります。習得状況に応じて、段階分けしないとダメです。「喉を開く」が実践出来て初めて、次のステップに進まないとダメです。

何故なら、「喉の開き」が完成しない段階で、あくび溜息法を実践すると、強固に「喉が閉じて」しまうんですよ。
ぶちこわしになってしまいます。






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